続いてモンスター大学

さて前記事からの続き、「モンスターズユニバーシティ」のネタバレあらすじです

勉強に勉強を重ねて、晴れて難関・東大法学部ならぬモンスター大学(以下MU)怖がらせ学部に入学したマイクと、同じく新入生ながらマイクとは正反対に、東大卒・官僚コースならぬMU卒・有名怖がらせ屋を多数輩出するエリート一家の御曹司で、生まれながらに怖がらせる才能にも恵まれたサリー。
マイクはサリーのエリート意識が鼻につくし、サリーはマイクのような才能のない奴が努力しても無駄だと思っている。
つまりまったくソリの合わない2人なわけです。

この2人がひょんなことから、かつて伝説の怖がらせ屋だった学長を怒らせてしまい、「あなた方は怖がらせ屋の資質なし」と怖がらせ学部を追い出されることに。
なんとか怖がらせ学部に戻りたい2人は、「競技大会に優勝すればチーム全員戻っていい、優勝しなければMU退学」と学長と賭けをし、協力し合って復学を目指すことに。
ここら辺の、他のおちこぼれメンバーと切磋琢磨し、強豪の同級生チームを次々破って優勝するところまでが、映画の3/4です。

はっきり言ってここまでなら、わざわざTSUTAYAでレンタルせずとも、家にあるジャンプを再読すればOK  普通によくある「友情努力勝利」ですから
いやまあ、落ちこぼれメンバーたちも個性豊かですし、その個性によって落ちこぼれたちが強豪たちを打ち負かしていくところなんかも、単純に面白いです。マイクやサリーが他の仲間を見下して、自分で勝とうとしているうちはダメで、チームメンバー各々の個性を発揮できた時に初めて団体として強くなるとか、そうした試合を通じてマイクやサリー、他のメンバーたちが心を通わせていくあたりとかは、さすが描写が上手いから説得力あるなピクサーと。

とはいえこういったことは、上手いジャンプ作品にだってちゃんと描かれているので、今更そこまで感動するこたないかな、まあいい話だけどベタだなあという感想は変わらず。
それがひっくり返るのは、つまりこの映画の真価であり、不登校親としてうっかり涙目になっちゃったのは映画の後半、残り1/4になってからです。

一応マイクたちは優勝できたのですが、そこでマイクは、自分には怖がらせ屋としての才能がないんだという痛恨の真実を、はっきり悟ります。
どんなに「お前には才能がない」と周りから言われ続けても自分を信じ、努力さえすれば夢の花形職業「怖がらせ屋」にだって必ずなれると信じ続けてここまで来たマイクが、初めて。
ピクサーお得意の、「子供向けの映画でありながら実はその親向け、大人向けでもある」という性格が、映画の残り1/4でいきなりくっきりと。大人はたいていそういう挫折感の1つや2つそれまでに味わっていて、「努力さえすれば夢は叶うなんて嘘っぱち」「諦めて現実と折り合いつけて生きるのも重要」と、つい思ってるところがありますからね~。「夢に向かって努力できる子になってほしい」と一方では心から願いつつも。
水辺に1人でじっと佇むマイクの後ろ姿は、切なくもやっぱり怖くなく、ちょこんとかわいくて、過去の挫折した自分や、これから挫折を味わうであろう子供がオーバーラップされてちょっと涙目。
この「努力ではどうにもならないことがある」というシビアな現実認識がはっきり描かれているのが、私的「MU」の真価その1。

しかしこれまでのあれこれから、いまやマイクを「尊敬できる友達」と思っているサリーは、「お前には俺にない才能があるじゃないか」と心から。
そして「お前が手に入れようと必死で頑張ってもどうしても手に入れられない才能を持っている自分にだって、お前にはない弱点がある」
そんな2人が、お互いの弱点を補い合うことで最強のチームワークを発揮し、なんと図らずも学長の伝説をも超える偉業を達成。
それまでは2人のことを「怖がらせ屋としての資質なし」と考えていた学長も、自分が間違っていたと2人に誠実に伝えます。
ここで真価その2。しかしどんなにレジェンド達成しようと、そこに至る行動あれこれはルール違反。学長の力を持ってしても、規定通り「退学」は免れませんよと。

下手なジャンプだったら、いや下手なドラマや映画全般もこんな時は、高確率で「お咎めなし」にしてしまうんじゃないでしょうか。
だってそれだけのレジェンドは見せつけてるわけだし、学長も「悪役→実はいい人」みたいな皆が好きなキャラにできて後味よし。そうして皆が望むハッピーエンドにすれば観客は感動するんだからいいじゃん、所詮はドラマ(や映画やジャンプ)なんだからさ。
しかしさすがピクサーは、そんな下手なドラマ製作者みたいなことはやらかしませんね。「世の中は一発逆転でチャラになるような、そんなドラマみたいなご都合主義にはなってないんですよ」という現実認識から逃げない。

とはいえ、下手なハッピーエンドじゃないのは確かに心地いいのですが、しかし今までマイクとサリーに感情移入して見ていた人間としては、それにしても救いがなくないかこれ、と思ってしまうのも事実。
しかーしご安心さすがのピクサー 私的この映画の最大の真価は、実にここから、すなわち退学になってからエンドロールが始まるまでの、測ってないけど正味5分くらい?のラストシーンです!

「怖がらせ屋」への安定路線であるMUを追い出され、これまでの努力もすべてパー、才能なしという自覚だけが残ったマイク。
代々MU卒業生を輩出する家柄の中で、自分一人が不名誉この上なしの退学、さらに才能はあっても理論が伴ってないので、この先怖がらせ屋として身を立てられるか厳しいサリー。
前途洋々だった未来は今や絶たれ、絶望して学校を去る2人でしたが、実はここからすべてが始まるのです!
人気一流企業・モンスターズ・インクにあって、常に作業員を募集している(つまりそれだけ人気がない)郵便配達部署。まずはここに応募して会社に潜り込み。
ここで活躍した後は、MUの学部の中でも一際やる気のない先生と生徒が集まってた(つまりモンスター社でも下請けに近い)ポンプ製造部署へ。そして次は社員食堂の配膳係e.t.c...
そういうふうに社内で下積みを重ね、成果を重ねて社内試験を受け、1つ1つステップアップして、いまや押しも押されぬトップレベルの怖がらせ屋となったのが、前作「モンスターズ・インク」でのマイクとサリーだったのでした!

いや~もう泣けちゃって
おわかりのとおり、至って単純なアメリカンドリームなんですよ。前述で散々けなした「諦めなければ夢は叶う」「友情努力勝利」そのものなのに
けど、やむなくレールを降りることになっても、それで人生終わりってわけじゃないんだ!自分でレールを作っていくことだってできるんだ!
というメッセージが、残り5分になっていきなり思いがけなく伝えられると、今まさにレールを降りちゃってる状態の不登校親は、ふいを突かれて泣けちゃって。希望で。

これがまた、明るくも切ない感じのテーマ曲に乗って、サラリと触れられているのが、ピクサーの上手いとこというか、涙増量の理由なんですよね~~~。
画面に映るのは、郵便配達、ポンプ製造、社員食堂での写真各1枚ずつ。それにあわせてマイクの「あれから俺たちこんなことがあったよな」「そうそうこれで2人で賞を取ったんだよな」といった声が被さるという具合。
さらりと懐かしげにしか言わないからこそ、言い尽くせないことは星の数ほどであったろうことが浮かび上がる。と同時に、写真の2人の姿はしかしそんな悲壮感なんて全然なく、目的とは違う目の前の仕事をあくまでも楽しみながら、賞を取るほど工夫して、打ち込んでいる、これが大事なんだよ、というメッセージも。
レールから外れてしまったら野垂れ死に、なんて決まってない。目的のためにひたすら我慢して頑張る、のが最善の人生ってわけでもない。その時その時を大切にすれば、道は必ず開ける。諦めるな!

ほんとよくあるテーマで、よくある言葉なんですけど、それが涙を誘うほど心にしみるのは、受け取る側のタイミングと、やっぱりピクサーが上手なんでしょうね~。
とりあえずこれから先、KKの入試時期になってまた心揺れた時は、「MU」の最後5分だけ見ようと思った、「モンスターズユニバーシティ」でした
(ちなみに本編終了後「そうはいっても、やっぱり努力が無駄に終わることもあってさ」という皮肉なワンシーンをくっつけるところもまた、いかにもピクサーっぽい

余談ですが、「この5分があるから傑作」、これは「カールじいさんの空飛ぶ家」もそうですね。
私がいっちばん好きなピクサー映画は「カールじいさん」なんですが、これもたった5分、いや10分くらいかな?のシーンがあるためなんですね。すなわちカールじいさんと妻エリーの、人生早回しセリフなしの10分間。及び映画中盤での、それをうまーく使った「わたしの冒険ブック」。
(そういえば「カールじいさん」も、「目的地に向かって遠回りでも誠実に生きてきた、その人生そのものが思い起こせば冒険だった。我が人生に悔いなし!!」という、MUに通じる話でしたね)
ほんとピクサーってこういう描き方が上手だな、とMU見て改めて思った次第です
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テーマ : ディズニー - ジャンル : 映画

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