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チリンの鈴によせて

現役最高齢漫画家・やなせたかしさん死去。

94歳ですもんね~。しかもこの御歳で老人ボケの気配すらなく、今年まで人前に出てピンシャンしていたというツワモノぶり
決して頑強なタチではなく、どころか糖尿病、白内障、緑内障、膀胱がん再発10回以上、腸閉塞、心筋梗塞e.t.c.という病歴の持ち主でもあったそうです。
この病身を抱えて、おそらく「知らない子供はいない」ってくらいのキャラを現役で生み出し続けた・・すごいなあ。いったいどこからあのパワーが出ていたのか。

「アンパンマン」が、自身の戦争体験から来る「飢えている人を救うことこそこの世に普遍の正義」という信念に基づく物語だったというのは有名だと思います。
ほんと画期的でしたよね!「じゃあ僕の顔をお食べよ」ってボコッと顔ちぎってプレゼントする正義のヒーローって
当初は「残酷だ」とのクレームも来たそうですが「正義には必ず何かしらの痛み=自己犠牲がともなう」という真理が共有されなくなっていたのでしょうか(自爆テロみたいな、独善的な自己犠牲をともなうハタ迷惑な正義もこの世にはありますが)

そうした、戦争体験に基づく「生き死に」の信念がガーンとあるせいか、この方の言うことって「なるほどな~」ということが多くて。
特に印象に残っているのは、「人生は満員電車だ」というお言葉。
「生きるっていうのは、満員電車でなんとか自分の席を確保するのと同じ。コツは途中下車しないこと。途中で降りさえしなければ必ずどっかで席は空くから」
この言葉を見たときは、なんだかすごくラクな気分になりました。

私にとってやなせたかし=アンパンマンという感じですが、実はアンパンマン以前に出会っていた作品が1つあります。
それが「チリンの鈴」。今でももしかしたら、アニメDVDであるかもしれません。
私はアニメじゃなくマンガで読んだのですが、こっれがも~~う!当時小学校低学年だったと思うのですが、いまだにこうして覚えているくらい印象的、というか衝撃的で。
私の価値観みたいなもんのベースを形作っている色々な中の1つに、確実になっていると思います。(以下ネタバレ)

チリンとはかわゆいふわっふわの羊の子 首につけた鈴がチリンチリンとなるので名前は「チリン」。
このチリンたちのいる羊小屋が、ある日こわーい1匹オオカミに襲撃されてしまいます。生き残ったのはチリンだけ。羊ママが血だらけになりながらおなかの下にかばったのでチリンは助かったのです。

チリンはオオカミを追いかけて「羊は弱いから殺される。ぼくはあなたのように強くなりたい」とニコニコして、一緒にいさせてくれと頼みます。
最初は「羊なんぞ。俺は1匹オオカミだ」と言っていたオオカミも、生活を共にするうち、いつしかチリンに情が移り。
チリンにはオオカミのようなキバはありませんが、かわりに2本の角があります。襲撃の経験を積むうち、これがバツグンの威力を発揮するようになるんですね。
こうして最強最愛のパートナーを得たオオカミ。2人はあちこちで動物を襲って生きていき、やがてこの周辺ではオオカミ&チリン=「恐怖」の代名詞のような存在になります。(風に乗ってどこからともなく「チリーンチリーン」と鈴が聞こえたら、動物たちにとっては襲撃の合図ですコワ~)

そうしたある夜、故郷の羊小屋を襲おうということになったオオカミ&チリン。
羊小屋の番犬を倒し、次は羊たちを・・・と思ったらなんと、チリンが角を突き立てたのは羊ではなくオオカミだったーーー
苦しい息の下から「なぜ」と問いかけるオオカミに対し、「計画通り」と告げる夜神月。じゃなくてチリン。お前に母や皆を殺された時から、ずっと復讐しようと思っていた、今までお前と行動をともにしてきたのもすべてはそのためだ。
それを聞いたオオカミは、「俺はいつかどこかで野垂れ死にすると思っていた。俺を殺してくれたのがお前でよかった」と、チリンに「感謝している」と言いながら息を引き取ります。

復讐をとげたチリンは「やったぜ!母さん見てくれたかい」と喜ぶべきところ、非常ーーーに空しく、寂しく、悲しいという想定外の思いにとらわれてしまうんですね。いつのまにか僕は、孤独を貫く彼の生き方、そしてその中にある愛情、ひいては彼そのものが好きになっていた。彼は僕のお父さんで先生で、かけがえのない友人だったんだ。
と、オオカミを殺してからそれらに気づき、孤独感にさいなまれるチリン。で、そうだ、羊たちの群れに戻ろう、そうして昔みたいに穏やかに暮らそう、と。

しかし訪れる羊小屋の先々で「うわチリンだー」「来るなーー」と、悪魔のような扱いを受けるチリン。「お前なんかと、怖くて一緒に住めるかよーー」
僕は殺された仲間たちの復讐をしたんだ、そしてもう二度と殺されないよう敵を倒したんだ、僕も危ない目にあいながら・・・なのになぜ拒絶するの?

嘆き悲しむチリンは、そこで水に映った自分を見てガクゼンとします。「オオカミ!お前まだ生きてたのか!」。
そこにいたのはふわっふわのかわゆい羊じゃなく、オオカミように燃えてつりあがった目、毛皮がすりきれて引き締まった、キズだらけの四肢、しかしオオカミとは決定的に違う、鬼のような2本のツノ。
自分がオオカミでも羊でもない、今度こそこの世にたった1匹のケモノになってしまったことを悟ったチリンは、泣きながら、いずこへともなく去っていき・・・
その後チリンの姿を見たものはなく・・・ただ時々、チリンの鈴の音だけが聞こえてきて・・・そして今日も羊のママは子羊に言います。「そんなに悪いことしてるとチリンの鈴が来ますよ」

どうですこの救いのなさ 私が見たのはやなせたかしさんのマンガ作品でしたが、とっても幻想的というか、天野喜孝的に美しくもおそろしい絵だったのが、ストーリーにさらなる迫力を与えてました(未だに覚えている、コマの絵数々)。こんな救いのないマンガを、よくまあ子供向け雑誌に載せたもんです
チリンの孤独。オオカミの孤独。昔はチリンがかわいそうでかわいそうで、オオカミが悲しくて悲しくて。今では羊小屋の一般大衆の言うこともよくわかる。なんとなく、戦後はこういうオオカミのようなチリンのような、そして羊たちのような思いが、現実としていっぱいあったんじゃないかという気がします。今も根底にはいたるところにある気もしますが、それは見えにくくなってるような。チリンの壮絶な孤独も、チリンに何かを負わせて羊たちの生活を成り立たせていることも、根底では変わらないのに。

余談ですがこのマンガは、当時サンリオがめちゃめちゃ高い志をもって出版していたマンガ雑誌「リリカ」で読みました。
この「リリカ」自体もまた素晴らしかった!手塚治虫、石森章太郎、水野英子、竹宮恵子e.t.c.e.t.c、錚々たるメンバーの作品がオールカラーで続々登場していて。ユニコ、魔法世界のジュン、伝説・・・ああこれまたいまだに覚えてるな~ 永島慎二も2ページ連載とかしてたような。「純情クレイジーフルーツ」の松苗あけみや、「ハイティーンブギ」の牧野和子なども、最初に知ったのはリリカでした。
途中からオールカラーではなくなって、紙質も悪くなって、子供心に「経営悪化?」を思わせつつやがて廃刊となりましたが、ほんとに本気で「子供にこういうマンガ雑誌を見せたい」という意気込みで作っている、という情熱を感じたものでした。「チリンの鈴」もたぶん「リリカ」だから載ったという気がします。やなせさんがこのころ、サンリオ雑誌「詩とメルヘン」の編集長だったことも一因かもしれません(「リリカ」にもよく載ってました「詩とメルヘン」

後年、チリンの鈴の作者=アンパンマンの作者と知って、いやもう驚いたもんですが(何より絵が全然違う!!!ま天野喜孝さんもえらくかわいい野菜とか描いてますけど
しかし今改めて、やなせたかしさんの言葉あれこれを思い出すと、やっぱりアンパンマンに通じるところがありますね。アンパンマン、すなわち「正義のヒーロー」を、裏から描いた作品というか。
「何が正義か、誰のための正義か」みたいな疑問を、子供のうちに「チリンの鈴」によってガツーンと与えられたのは、個人的にとってもよかったと思います。そして「正義とは、飢えた人に自分のアンパンを分けてやることだ」と、やなせさんが常に答え続けてくれたことも。

おそらく20~40歳代のママさんには「アンパンマンなら描ける」っていう人多数だと思います。子供に「描いてー描いてー」とせがまれ続けて、アンパンマンならもう見なくても描けちゃうよっていう
多くの子供たちにそれほど愛された「アンパンマン」。改めてやなせたかしさんのご冥福をお祈りいたします。

またまた余談ですが、私が一番印象に残ってる「アンパンマン」エピソードは、バイキンマンが野に咲く花を見つけて「うわおなんてキレイなお花」とウットリするところ。
へ~バイキンマンもこういう感受性を持ってるのかとちょっと感動した瞬間、「俺様こういう花を見つけると踏み潰したくなっちゃう♪」と満面の笑みでグシャグシャ踏み潰してたのが「やなせたかしおそるべし」という感じでした
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コメント

初めて知りました

K&Uさんの博学っぷりには本当に脱帽します。そのお話、すごいですねえ・・。ちょっと「ヤクーバとライオン」http://www.ehonnavi.net/ehon/24269/%E3%83%A4%E3%82%AF%E3%83%BC%E3%83%90%E3%81%A8%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%B3%EF%BC%881%EF%BC%89%E5%8B%87%E6%B0%97/にも通じるし、友達シリーズにも(やっぱりオオカミが出てくるっていう時点で。。)通じるhttp://kodomotoshokan.com/p1-b-book/tomodati.html

「愛と勇気しか友達いないんだ~へ~」みたいな悪口を言ってた子供たちですが、あんぱんぱんのビデオを見ると、とにかく小児科の待合室とか入院を思い出します。・・・・繰り返し繰り返し見たなあと。

奥さんなくしたあと、奥さんとも親交のあった里中満智子さんと嘘結婚式とかやったりして最後に「嘘でした~」って言ったりしたっていうエピソードが、私的には、けっこうキテましたけどね・・・!!

子供だけでなく、私自身が親として、特に子供のピンチのときに助けられたし、彼が死してもその偉大さは褪せない。すごいよね。

子供がいないことについて、自虐的に語る30代以上女子が多いけれど、子供なんていなくても、やなせさんのように生きることを目指せばいいと思う。




Re: 初めて知りました

こんにちは~♪
Kさんこそ、色んなお話知ってる!「ヤクーバとライオン」初めて知ったけど、ちょっと自分用に読みたくなりました~(チリンの鈴より救いがありそうだね(^^;))。友達シリーズは「あらしのよるに」みたいな感じかな~??

>「愛と勇気しか友達いないんだ~へ~」
ハハハお子さん方うまい(>▽<)なんだかアンパンマンがめっちゃ孤独なヒーローに見えてくる。
小児科の待合室、わかる~!!どんな病院にも必ず貼ってあったり置いてあったりするよね。で長い待ち時間、名前あてっこしたりビデオ見たり。。。なんだか今改めてアンパンマンの存在の大きさを思いました。

ええ~~そんなエピソードがあったんだ(>▽<)
やっぱりこう、人を喜ばせたり驚かせたりするのが根っから好きなんだろうね。エンターティナー気質というか(それに乗る里中満智子もすごいけど(>▽<) あの人はマンガからして「優等生」ってイメージしかなかったから意外だわ)
やなせさんって、絶対単純な「正義バンザイ」みたいな人じゃないっていうのは確信してるのよね、あのバイキンマンの話もそうだけど(^^;) すごく突飛な例えかもだけど「ロックな人」っていうのが自分の中ではしっくり来るわ。ロック的な愛と平和みたいな。
 
子供がいるいないって、まあ選択したって人もいるんだろうけど、ほとんど運とか流れって気がするんだけどね~
だからもうしょうがないっていうか、満員電車で自分の座る場所を見つけたら、もうそれだけでいいじゃないっていうね。
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