ヤマトバタラキ~満州鉱工青少年訓練所の生活

「日本体操」と書いて「ヤマトバタラキ」と読む、いやそう読まされた。
この体操も、ことあるごとにやらされた。体操と言えば体操だが、これがまたすこぶる変わった体操で、戦時下ならではの神がかり的なものだった。

体操の一挙手一挙動もさることながら、全員が号令をかけながら行うもので、その号令たるや「一、二、三」ではなく、すべて「ひ、ふ、み、よ、いつ、む、なな、やー」といった調子である。
一通りの所作が済み、これで終わりかと思えばさにあらず、ここからが「ヤマトバタラキ」の真骨頂である。

拍手打って、恭しく一礼してからおもむろに、神主があげる祝詞のような、坊主が唱えるお経のような、変な節をつけて経文様の文句を長々と斉唱するのである。
戦時下にはお定まりの台詞だったが忘れてしまった。が、その言わんとするところは
「天孫降臨に始まって--豊葦原の瑞穂の国がドウトカして--われらは天皇の赤子であり--つまりは君のため国のため、身命をなげうって奉公する--」
というようなものだった。
最後に、ひときわ恭しくあらたまり、「すめら命(みこと)--いやさかーー」と怒鳴り、両手を挙げる。この「いやさか」を3回繰り返す。3回目はもったいつけ一段と声を張り上げ「いーやーさーかー」で、全巻の終わりとなる。つまり「天皇陛下--万歳」の三唱である。
たまげたもんで、いくら非常時でも体操するのに何も「神代の昔」まで持ち出すこともあるまいに--まったく珍にして妙な体操だった。

1ヶ月に及ぶ訓練期間中、心身ともにクタクタになるまで鍛えられたが、ことさら印象に残るものもなかった。ただ前記「綱領」と「万世一系ゆるぎない歌」と、この「日本体操」の3つだけが浮き彫りされ、馬鹿らしい中にも幾分の懐かしさはある。

なお、渡満入社後も、この「日本体操」が珍しいということから、会社の運動会その他の諸行事に狩り出され、観衆の面前で「ひーふーみー」と性懲りもなくやらされた。
初めて見る観衆は、物珍しさと「変な体操」に感心して拍手を惜しまなかったが、やっているこっちは少々阿呆らしく、恥ずかしかった思いがある。

「じーちゃんの昭和」目次
スポンサーサイト

テーマ : 歴史 - ジャンル : 学問・文化・芸術

コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する